月球儀少年
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煙草の話(永沖)
■描けなかった永沖漫画のプロット。一回肉体関係もった後位の話。
昼休憩の合間、いつも沖田さんは外に一人で煙草を吸いに行く。
彼の日課でもあり癖でもある。
一本吸い終わるのを合図に休憩から仕事モードにスイッチを切り替える。
可笑しな事に最近になって気が付いた。
あんなこと、があってから、居ないと無意識に姿を探すようになり、
居たら居たで目で追うようになり、脳内のほぼ全てが
もっと彼の事を知りたいという欲求でパンクしそうになっていた。
当の本人にはまるで何もなかったかのようにのらりくらりとかわされる。
じゃああれは何だったんだと沖田さんに問い詰める勇気もない。
(嵌められたんだろうか…)
不安と、出来ればもう一度彼に触れたいという願望が頭から離れなくなり
今日は思いきって自分から声をかけに行った。
「何だ永井、用か。」
煙草を吸いながら後ろから近付いた俺に、背中を向けたまま声をかけられる。
そっと隣に陣取ろうという作戦が、沖田さんに先制攻撃を受けてしまい
「あ、いや…」と言葉につまる。
沖田さんがこっちを振り返った。
相変わらず何処みてんのかわからない。
こっちは何でもいいから構って欲しかっただけ、とは言えない。
一生懸命ぐるぐると話題を探す。
「お、沖田さんはどんな煙草吸ってんのかな~って…は…は…」
適当に言うと、少し意外だなという目をしたあと
すぐまた何処みてるんだかわからない表情に戻って
「ん~?セッタ。お前は。」
と呑気な声で返してきた。
「セッタ?スか。へえ、俺ずっとマルボロですけど。」
「最近の若いやつはどいつもこいつもマルボロ吸いやがって…」
沖田さんがガキのチョイスだな~といわんばかりの口調で返してくる。
「俺マルボロ以外吸ったことないんスけど、セッタってどんな味するんスか?」
単純な興味から言うと、沖田さんは手に持っていた吸いかけの一本をちらっと見て、
一吸い。
何だこの間…と思っていたらあっと言う間に胸ぐらを捕まれ、
勢いよく沖田さんの唇に引き寄せられた。
「?!!…きたさ…っ?」
「こんな味。わかったか?永井」
「!」
いたずらが成功した子供みたいにアハハと笑う、
その笑顔がくそムカつく程かっこいい。
「大人の味したろ~」
吸い終わった一本を捨てて、じゃな、戻るわ、と去っていく。
からかわれたんだろう完全に。
「頭真っ白で味なんかわかんないっスよ!」
やけくそにデケー声だしたら、振り返って「ガキだね~」と
笑いながら帰っていった。
(どうしてくれんだ、くそっ!
余計に気になる事が増えただけじゃねーか!)
一人取り残された永井の叫びが果たして彼の背中にとどいたかどうか。