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2012年三沢誕(三沖)


■三沖漫画のプロット(2012/11/9)

羽生蛇村の土砂災害の派遣救助作業中に倒れたと連絡が入った。
唯一生存した少女を抱えた状態で気を失っていたそうだ。

病院には行くことができなかった。
自分にも羽生蛇村で救助作業をこなさなければならない任務があったからだ。
その任を解かれ、久方ぶりに会った時には「誰だろうか」と思うほどに表情が変わってしまっていた。

それも悪いほうに。

こちらが先に見つけたのに後輩の自分にはその変わり果てた表情にかける言葉が見つからず、向こうが「沖田か」とこちらの視線に気づくまで動く事すらもできなかった。

「大丈夫・・・じゃないみたいですね」
その顔。
苦笑混じりに投げかける。
彼は笑わない。
表情を失ってしまったようだった。

帰って来てからの彼は、一人で居る事を好んだ。

そして薬を飲んでは乱暴に身体を「使われる」ようになった。

以前はどんなに懇願しようが抱いてくれもしなかった。
好きだった。抱かれたかった。自分だけを見てほしかった。
酔った勢いで醜態をさらしてしまった事もある。

好きです、抱いてください、三沢さんがしてくれないならここで一人でします。

彼は黙って「見て」いた。
その行為が終わるまで。
脱力と虚しさで余計涙が出た。


そういえば一度だけ。
まだ入隊して間もない頃だったか。
自衛官を辞めようと思う程打ちのめされた出来事があった。
無口な彼らしく静かに聴き、寄り添い、優しく頭を、背中を、撫でてもらった。
あの日から。
大きな手と、手のひらの暖かさを忘れられなくなったのだ。

好きだった。
繋がりたかった。
しかし。

(繋がってはいけない人だった)

俺はそのうちこの人を、
この憧れた先輩を、
身も、心も、全て、

(壊してしまうかもしれない)


自分の寂しさを埋めるだけならば、他の相手などすぐに見つかる。
もう二度と、誰も好きにならない。
乱暴に揺さぶられ続ける時間の中でそう思った。


おそらくそれは若い自分にはわからなかった。
触れない選択も、優しさと愛情のそれであることに。
あの優しい時間は、2人の間にはもう、戻らないであろう。


この人が壊れて初めて、ああ、俺は愛されていたんだなと気がついた。
 

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